開発技術名
「養殖カキの選抜育種の有効性」
技術開発の経緯
平成22~24年度に実施、開発を行った「養殖カキ人工採苗技術の安定化および簡易化」技術を利用して集団交配による選抜育種を行った。外殻の色調及び形態について特徴のある形質に着目し、1~2世代での形質発現状況を確認することによって選抜育種の有効性を検討し、今後の優良品種開発のための育種手法の開発を行った。
開発技術の内容
ア 外殻の色調(例えば、黒地に白いラインの入ったもの、白地に黒のラインの入ったもの、全体が黄色いもの等)に着目して集団選抜育種を行ったところ、F1世代において親と同様の色調となったものは68.6%~85.2%となり、ほぼ親の形質が受け継がれることがわかった。
イ 外殻の形態については養殖方法による差が大きく、カゴ養殖では殻幅が大きく殻高に対する殻長も大きい傾向がみられ、吊線式養殖では殻幅が小さく殻高に対する殻長も小さくなる傾向がみられた(環境要因)。同一方法(カゴ養殖)で育成すると、殻幅が大きいという形質に着目した集団選抜育種を2世代行い、遺伝率(h2=ΔG/i)を推定したところ、天然採苗集団からF1世代では0.430、F1世代からF2世代では0.209ないし0.424となり、育種の効果が示唆された。
ウ これらの結果より、養殖カキの育種を行う上で、集団選抜育種が有効であるといえる。
期待する効果
本県の養殖カキは剥き身での流通が主流であるが、徐々に殻付きでの出荷が増加している状況にある。殻付きで流通する上で、外殻の色調や形態に特徴があると容易に他と差別化ができ、県産カキのブランド化が期待できる。このため、本技術を用いて、産地(浜)ごとのニーズを取り入れた品種開発に取り組むこととしている。
連絡先
水産技術センター水産増殖部 078-941-8601 (作成者:谷田圭亮)