私の試験研究
当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。今回は淡路農業技術センター農業部 主任研究員 中野伸一が担当します。
はじめに
ドローンといえば東京オリンピックの開会式でドローンを使ったパフォーマンスが行われたことは、みなさんの記憶に新しいのではないでしょうか。近年ドローンは急速に発展、普及し、みなさんの生活の中でも馴染(なじ)みのあるものとなってきているかと思います。私はそんなドローンを使って2018年から圃(ほ)場のレタスを撮影し、収穫日や収量を予測する技術開発に取り組んでいます。
成果1 ドローンを使ったレタスの収穫日予測
難しいことをしているように思われるかもしれませんが、やっていることはそんなに難しくありません。ドローンでレタスの画像を上空から撮影し、AI(人工知能)を使って画像からレタスの葉の枚数を推定します。葉の枚数と気温の関係式(図1)に、天気予報の気温データを当てはめて将来の収穫日を予測します。収穫時の葉の枚数は約40枚ですので、枚数が40枚になる時の積算温度から収穫日を予測します。上空から写真が撮れればデジカメでもスマートフォンを使っても、収穫日予測はできるのですが、ドローンの利点は広範囲の画像をピンポイントで数多く撮影できる点です。実際のレタス圃場は現場では散らばっていることが多いので、ドローンを使うことで散らばった圃場のデータを一気に取得することができます(図2)。
ドローンを使えば鳥のように俯瞰(ふかん)でレタス圃場全体をみることができます。これまで上空からの俯瞰写真は、人工衛星や航空写真を利用する必要があり、取得するためのコストが高かったことが問題でした。私が研究で使っているドローン一式は20万円程度で購入することができ、画像取得のためのコストは昔と比べると格段に下がっています。レタス圃場全体を俯瞰することで、これまでは一株ずつ撮影しないと取得できなかったレタスの葉面積を圃場全体の画像から取得することができるようになりました。
この圃場全体の植被率(葉が地表面をどれくらいの割合で覆っているか)とレタスの圃場全体の収量に相関関係があることを明らかにし、植被率から将来のレタスの収量を予測する技術を開発しました(図3)。
今後の展望
ドローンを使ったこれらのレタスの収穫日・収量予測技術は、現在、淡路島の集落において現地実証を行っています。また、画像を利用してレタスの収穫日を予測するスマートフォンアプリの開発も行っており、淡路島のレタス生産者がアプリを使って生産や販売に活用する計画も進めています。