開発技術名

「駆け廻し漁具(ST型ひき綱・大目網)の改良と漁具動態の可視化」

 

技術開発の経緯

ア 地域の基幹漁業である底びき網漁業では、資源管理とともに、効率的な漁獲性能と省エネ・省力化技術の推進が急務となっているため、底びき網漁具の改良試験に取り組んできた。
イ 今般は、完全左右対称型(ST型)のひき綱と、奥袖から荒手にかけての網目拡大について、主に省エネ、省力、省スペースの観点から効果を検証した。
※底引き網は船から降ろすひき綱に網がつながっており、綱に直接つながるのが荒手でそれに続いて、袖、奥袖と続き、先端が袋網である。荒手から奥袖の編み目が細かいと引くときの抵抗が大きい。

 

開発技術の内容

ア 完全左右対称型(ST型)のひき綱
ひき綱を「手元から網付きまで対称な構成」とすることで、揚網終了から次の投網の間に行われる「巻き返し」作業行程が削減され、甲板のスペース拡大と安全性の増大が図られる。
綱の掃海面積、網の移動速度と移動距離などについても、手元綱を有する従来型の構成に対する優位性が認められる。
水深500mの大水深においても特徴を損なうことなく操業可能である。
イ 奥袖から荒手にかけての網目拡大
荒手から奥袖部分の網目を拡大することで、曳網抵抗の軽減、網の沈降・動き出し・移動速度が速まる。また、漁具の容積、重量の軽減が図られる。
ウ 漁具動態の可視化
調査船「たじま」で得たデータを「質点・バネモデルの有限要素法を用いたシミュレーションソフト(釜慶大学MPSL)」に適用し、掛け廻し漁法の操業過程における漁具動態を可視化できたことで、この漁法に対する理解を助け、効率的な改良に活用できる。

 

期待する効果

ア 巻き返し作業の削減により、1操業につき2人×5分程度の作業量の省人・省力化が図られる。
操業と作業スペースに余裕が生まれ、安全性も向上する。
イ 網目の拡大により、省エネ・省スペースが実現できる上に小型魚の保護効果が期待できる。
ウ 駆け廻し漁具のシミュレーション技術が確立されたことにより、若手漁業者の理解を早め、漁業関係者のイメージ共有が図れ、さらなる漁具の改良に活用が期待できる。

 

連絡先

 但馬水産技術センター 0796-36-0395 (作成者:大谷 徹也)