開発技術名

「大型クラゲ・カレイ幼稚魚・混獲ズワイガニの排出機構開発」

 

技術開発の経緯

 日本海での大型クラゲ発生頻度・規模が増大し、被害が底びき網漁業へも拡大しているため、入網した大型クラゲを網外に排出する機構を開発することとした。
 また、本質的に幼稚魚・目的外魚種の混獲の問題を抱える底びき網漁業において、漁業の効率化と不合理漁獲軽減のため、カレイ幼稚魚並びに漁期外に入網するズワイガニの混獲死亡を軽減する機構を開発することとした。

 

開発技術の内容

①大型クラゲの排出機構
 既存の漁具に以下の改良を加え、大型クラゲを排出する漁具を開発した。
 排出口を、網地を進行方向に対して垂直に裁断し、裁断部後方の外側に長方形の覆い網を配する形とした。
 覆い網を、前・上・下の3辺で網地に取り付け、前辺の一部は裁断部前方の網地と一繋がりとした。
 裁断部後縁を1.2mのロープで矯正した。排出口を、奥袖の下から2/5の高さに設置した。
②カレイ類の幼稚魚混獲防止技術
 既存の漁具に以下の改良を加え、クモヒトデやカレイ類幼稚魚の混獲を防止する技術を開発した。
 底びき網の入り口であるグランドロープを吊り岩構造とし、グランドロープがフィッシングラインの前方にくるように短く調整することで、幼稚魚の排出を阻害するクモヒトデ等の夾雑物の入網を防ぎながらカレイ類等を漁獲することができた。
 あわせてカレイ類の網目選択性試験を実施し、50%選択体長(体長階級ごとに見て半数が網目を通過するサイズ)を確認した。
③混獲ズワイガニの排出機構
 既存の漁具に以下の改良を加え、アカガレイを漁獲するときに混獲されるズワイガニを排出する漁具を開発した。
 底びき網の下胴後部に矩形(台形)の段差を設け、その後端(台形の上底部分)を排出口とした。
 横2m×縦20cmの排出口をロープで5等分した(1区画は横40cm×縦20cm)。

 

期待する効果

①大型クラゲ排出機構
 開発したクラゲ排出機構を導入した漁具により、袖網を経由して来るクラゲの9割、網全体としては4割のクラゲを排出できたため、ハタハタ、ニギス、タラ類など遊泳力のある魚を対象とする網において特に有効である。
②カレイ類幼稚魚混獲防止
 開発した混獲防止技術により、網目選択性を悪化させるクモヒトデの入網を抑えつつカレイ類を漁獲することができる。
 また、袋網に75mm(5節)以上の網目を用いることで、体長16cm(全長約20cm)以下のカレイ類を保護することができる。
③混獲ズワイガニ排出機構
 開発した排出機構を導入した漁具により、入網したアカガレイの9割を保持しながら、混獲されたズワイガニの6割を排出(いずれも尾数ベース)することが確認できたため、特に秋・春の高水温期において、ズワイガニの混獲死亡を大幅に軽減することができる。
 また、構造がシンプルなため、取り扱いが容易で低コストで導入できる。

 

連絡先

 但馬水産技術センター 0796-36-0395 (作成者:大谷徹也・尾崎為雄)