開発技術名
極早生タマネギにおけるネギアザミウマの効率的・効果的な薬剤防除体系
技術開発の経緯
令和2年5~7月、県内各地でアイリス黄斑ウイルス(以下、IYSV)による病害が認められ、県南部のタマネギ圃場では本病害が主要因と考えられる深刻な葉枯れ症状が広域的に発生した。IYSVの媒介虫であるネギアザミウマは、薬剤感受性が低下しやすい難防除害虫であるが、本県のタマネギ産地における発生実態や薬剤感受性は長らく調査されていなかった。
そこで、ネギアザミウマの主な越冬源と考えられる極早生タマネギにおいて、ネギアザミウマの発生実態及び殺虫剤感受性に基づいた効率的・効果的な薬剤防除体系の確立を試みた。
開発技術の内容
ア 極早生タマネギ(10月下旬定植)では、苗床~本圃への定植直後の気温が高い時期に、ネギアザミウマが飛来し、12月上旬までに増殖した後、冬季も密度が維持される。その後、3月中旬頃、気温の上昇に伴って、圃場周辺からの成虫の飛来及び越冬世代の増殖に起因して、さらに密度が増加する。
イ 採集年度、採集地点に関わらず、アセフェート水和剤、プロチオホス乳剤、フルキサメタミド乳剤、フロメトキン水和剤は、ネギアザミウマに対する殺虫効果が高い。
ウ ネギアザミウマが飛来する定植直後(11月上旬)にアセフェート水和剤を1回散布することで、収穫期(4月上旬)におけるネギアザミウマの成虫・幼虫の密度を、無処理区に比べて50%程度に抑制することができる。また、冬季(1月中旬)に散布しても、定植直後(11月上旬)に散布する場合と同程度の防除効果が得られる。
エ ネギアザミウマの活動が盛んになる3月にフルキサメタミド乳剤を1回散布することで、収穫期(4月上旬)におけるネギアザミウマの成虫・幼虫の密度を、無処理区に比べて25%程度に抑制することができる。また、3月に加えて、11月上旬にもアセフェート水和剤を散布することで、対無処理10%と高い防除効果が得られる。
期待する効果
極早生タマネギでは、栽培期間を通して、IYSVの保毒虫が継続的に認められる。極早生タマネギにおいて、体系的な薬剤防除を行うことで、ネギアザミウマおよびIYSV保毒虫の密度を減らすことが可能となり、周辺の中生・晩生品種におけるIYSVの感染リスクを低減することが期待できる。