当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。今回は内水面漁業センター 副主任 岡本裕太が担当します。

はじめに

 アユは寿命が1年で、秋から冬にかけて産卵し、孵化すると海域に流下して、春に再び河川へ遡上する両側回遊性魚類(りょうそくかいゆうせいぎょるい)です。キュウリやスイカを思わせる爽やかな香りが特徴的で「香魚」とも呼ばれています。

 アユは、内水面漁業や遊漁において最も重要な魚種の一つであるため、資源を守るため、放流や産卵場の整備、漁獲規制、外来魚の駆除など、全国で様々な取り組みが行われています。

 しかし、近年の水温上昇や渇水などの環境変化によってアユの資源量に大きな変化があると言われています。そのため、河川にどれくらいアユがいるかを把握することは、適切な放流計画や資源管理を行ううえで重要です。

 これまで兵庫県では、アユの資源量に関するデータが乏しかったため、2025年から資源量の推定に取り組んでいます。

 

調査方法

 アユは天然環境で育ち遡上してきた個体(以下、天然個体)と人の手で育てて放流した個体(以下、放流個体)で、図1に示す部分の鱗数(りんすう)に違いがあるという特徴があります。その鱗数のことを「側線上方横列鱗数(そくせんじょうほうおうれつりんすう)」と言います。

 

 

その特徴を利用して次の手順で資源量の推定を行いました。今回は、兵庫県日本海側の河川Aで得られたデータとともに紹介します。

 

資源量推定の手順

①側線上方横列鱗数(以下、鱗数)による判別基準の作成

 確実に天然個体または放流個体と分かっているアユを準備して、その鱗数を測定し、それぞれの判別基準を作成しました。鱗数は、顕微鏡で計測しやすいようにトリパンブルーという染色液で処理してから計測しました(図2)。

 

 

計測した結果が図3です。この結果から鱗数が「14枚以下が放流個体」、「16枚以上が天然個体」、混在している「15枚は判断保留」としました。

 

 

鱗数の分布は年によって変化することがあるため、判別基準は毎年作成する必要があります。

②河川全体の天然個体と放流個体の比率を算出

 69月は確実に天然個体と放流個体が河川の中に混在している状態です。その時期に漁獲されたアユの鱗数を測定し、天然個体と放流個体の割合を算出しました。漁獲された421尾のアユについて鱗数を計測した結果、天然個体が385尾(約91%)、判断保留が16尾(約4%)、放流個体が20尾(約5%)で、202569月における河川全体のアユに占める放流個体の割合は約59%と算出されました(図4)。

 

 

③放流尾数から河川全体の資源量を推定

 河川Aを管轄している漁業協同組合への聞き取りから、実際に放流されたアユは約8万尾でした。

この放流尾数と放流個体の割合をもとに計算した結果、河川A全体のアユ資源量は約94169万尾と推定されました。

そして、河川Aの天然個体は約86161万尾と推定しました。

 

まとめ

アユの側線上方横列鱗数を計測することにより、天然個体と放流個体を判別することができました。また、その結果を活用することで、2025年の兵庫県日本海側の河川Aにおけるアユの資源量は約94169万尾で、そのうち遡上量は約86161万尾と推定されました。

今回得られた値は、推定値ではあるものの、本県のアユ資源の状況を把握するうえで貴重なデータとなりました。今後も調査を継続してデータを蓄積し、アユ資源の保護や適切な管理に役立てていきます。