開発技術名

「災害緩衝林整備範囲及び整備重点箇所の決定」

 

技術開発の経緯

 引き倒し抵抗力が大きく、倒れにくい木を山地渓流の緩傾斜地に配置することで災害緩衝林となる事はわかっているが、その効果的な配置や整備方法などはまだ不明な点が多い。今回は1/30の水路試験により山地渓流をモデル的に再現し、有効な災害緩衝林造成のための整備方法を明らかにした。

 

開発技術の内容

 ア 水路実験による検証にて、湾曲渓流を流下する土石流は最大20mの渓岸をせり上がることが確認できたため横断方向の整備範囲は、片側20mが妥当である。
イ 土石流は直進性が高いため、直線渓流においては、流路付近の樹木が効果を発揮し、湾曲渓流においては、湾曲部の外湾部の樹林が効果を発揮する。したがって、積極的に整備する渓畔林としては、直線渓流の水路沿い2-3列、渓流湾曲部の外湾斜面とし、これらの部分を最大限に利用することとする。
ウ 渓床勾配15°以上の土石流発生区間は、土石流捕捉効果よりも崩壊防止効果、土石流減衰効果をねらい、倒木になりそうな木を選択的に抜き切りする整備を行う。渓床勾配10°以上15°未満の土石流流下区間は、土砂・流木捕捉効果が見込まれるため、捕捉効果の高い倒れにくい大径木を育成する整備を行う。渓床勾配2°以上10°未満の土石流堆積区間は、土石流の流体力が小さくなるため小径木の緩衝林であっても捕捉効果が見込める。そのため、通常間伐を行い、森林全体による捕捉効果を高める。
エ 災害緩衝林では流れてくる土砂・流木のすべてを補足する事は困難であるため、保全対象が近いところは、渓流の出口付近の渓床勾配10°以下の区間に簡易流木止めを設置したり、渓床勾配15°未満の区間に鋼製床固め工を設置するなど、災害緩衝機能の向上を図る必要がある。

 

期待する効果

 第3期の緊急防災林整備渓流対策に取り入れ、流木被害が出にくい渓流を整備する。

 

連絡先

 森林林業技術センター森林活用部 0790-62-2118 (作成者:藤堂 千景)