今の世の中、「コシヒカリ」というお米の品種の名前を知らない人は少ないでしょう。『King of Rice』と称されるほどです。ちなみに、お米の食味が強く意識されるようになったのは、昭和40年代からですが、それまでは戦争の影響もあって、質より量が問題視されていました。
そうしたことから、現在普及している品種の約70%は、遺伝的に何らかの形で「コシヒカリ」と関係しているとされています。余談ですが、こうした事態は危険な要素をはらんでいると心配しています。遺伝的に広範な多様性を持たせることが、環境の変化への対応性を向上させ、主食としての米の作柄安定化、ひいては国民の生活安定につながると思うのですが。
さて、このおいしいお米はどこに由来するのでしょうか。近代品種の改良に用いられた在来品種の主要なものとして、「上州」、「撰一」、「旭」、「愛国」などがあげられます。このうち「旭」は、明治42年(1909年)に、京都府乙訓郡向日町(現在の京都府向日市)の山本新次郎氏が「日ノ出」の栽培田で発見した変異株を増殖したものです。「旭」は本来近畿地方以西の晩生種でしたが、栽培が普及拡大される間に、熟期の早い早生種や中生種も選出され、各種の「旭」が生み出されてきたと考えられます。
「コシヒカリ」は、母:「農林22号」と父:「農林1号」の交配により育成されたものですが、その母の「農林22号」は「銀坊主」×「朝日」に由来しています。
この「朝日」は、大正11年(1922年)兵庫県農事試験場が「朝日」として奨励品種に編入したもので、何故「朝日」と改称したかは不明ですが、「旭」と同一のものと考えられます。
現在の良食味品種の代表が「コシヒカリ」とされているところから、その起源が「旭」にさかのぼるとするのもあながち間違いではないと言えるのではないでしょうか。
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