お米につく白い虫の正体はノシメマダラメイガという蛾の仲間と思われます。最も一般的な穀類の害虫です。
米や麦などの穀類、豆類などを食害する害虫類を「貯穀害虫」といいますが、約1000種類が知られています。
貯穀害虫と人類とのつきあいは古く、紀元前2500年ほど前のエジプトの王の墓から、現在も重要な害虫であるヒラタコクヌストモドキが発見されたり、ツタンカーメンの墓からもやはり何種類かの貯穀害虫が見つかっています。
農薬のない昔の人々にとって貯蔵中の穀物を食べてしまう害虫は、悩みの種だったろうと容易に想像できます。
特に翌年の種子として貯蔵しているものが食べられることは大問題だったでしょう。そこで、なんとか貯穀害虫やネズミなどの被害を防ごうと、人々は共同で貯蔵施設を作ろうとしました。いまでも奄美大島など南の地域に高床式の施設をみることができます。ところで、お金を預けると「利子」がつきますが、その原型は「大切な種子を預かって貯蔵してもらった。そのお礼をかねて収穫時に預かってもらった以上の量を返す。」との習慣がうまれたことにあるようです。
さて、ノシメマダラメイガという蛾ですが、穀物や豆類、乾燥果実、砂糖など多くの食物を食べます。お米を食べる場合は、まず「胚」の部分を食べ、次に糠層(玄米の外側の部分)を食べますが「胚乳」部分は食べません。糸を吐いて米をつづる(糸によって米がつなげる)ために、気づいたときには「ギョッ」としますよね。食べるのに勇気がいるかもしれませんが、私たちが食べる部分である胚乳は残っているためよく洗えば食べても問題はないと思います。温度と昼の長さによって冬は休眠するために目につかなくなりますが、5~6月頃に最も発生が多くなり年間に2~4回成虫が発生します。とはいえ、明るく暖かい家の中に貯蔵されていると冬でも出てくることもあるようです。今は、10~15℃で保管できる保冷庫が普及してきています。こうした保冷庫に貯蔵して、必要な量をその都度利用するようにすれば被害を免れます。か弱いように見える幼虫ですがあごの力は強く、固い柱などにも容易に穴を開けることができるため、ビニール袋などはおちゃのこで食い破ります。
ところで貯穀害虫にはノシメマダラメイガなどの蛾類と甲虫類が主で、甲虫には「コクヌスト」と名付けられている種類があります。文字通り「穀盗人」、つまり穀物を盗む虫たちという意味で名付けられたのでしょう。害虫とはいえ「泥棒」と名付けられた虫たちに少し同情したくなります。
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