人間をはじめ動物は、インフルエンザ等のウイルスが体内に侵入してくると、それらに対する抗体を作って対抗する「免疫」という機能を持っています。ところが、植物は抗体を作る機能を持っていません。そのため、植物がウイルス病に感染すると、自力でウイルスを排除することが出来ません。
 植物がウイルス病に侵されると、ほとんど全身にウイルス粒子が蔓延します。でも、ウイルス粒子が侵入しない場所が2種類あります。種子と茎頂(茎の先端約0.3mm)です。種子で繁殖するイネや麦類などは、栽培途中でウイルス病にかかっても翌年には新しい種子をまきますので、次の年には、また無病の状態から始められます。やっかいなのは、イチゴやカーネーションなど、種子ではなく栄養繁殖を行う作物です。栄養繁殖というのは、植物体の一部(枝など)を切ってきて、それを新しい個体に育てる繁殖方法です。ウイルス病にかかった体の一部を切ってくるとそこにはウイルスが存在するので、新しい個体(次の年の苗)は最初からウイルス病に汚染されてしまうことになります。
 そこで、ウイルスに汚染された栄養繁殖性作物について茎頂培養という技術が開発されました。茎の先端0.3mmほどの部分はウイルスがいないといっても、その部分だけを切り取って土に植えては絶対に育ってきません。なので、茎頂部分を切り取って、試験管の中で栄養分と湿度を与えて、さらに植物ホルモンで成長を制御してやります。そうして始めてウイルスを除いた植物を作り出すことができます。

 

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