育種技術には従来、交配が利用されてきましたが、近縁種でしかできない、大きな変化があまり期待できないなどの理由から育種にバイオテクノロジーが利用されるようになりました。ここで利用される技術は組織培養法、細胞融合法、突然変異誘発法、遺伝子組み換え法などがあります。
組織培養は後述の突然変異誘発による育種以外にも胚培養、葯培養など植物の一部を利用する方法があります。それぞれの植物から胚や葯などの部位を培養して植物体にし、その中から育種目標に合った個体を選抜します。胚培養の場合は属間交配のように受精しても種子ができないような場合に受精後の胚を取り出して培養する方法です。葯培養の場合は花粉の入った葯を取り出して培養する方法です。
細胞融合法は掛け合わせたい2種の植物をバラバラの細胞にして融合し、融合細胞を個体にする方法です。理論上はどんな植物でも融合可能ですが、融合しても個体にならない場合もあります。
突然変異誘発法は突然変異体の中から育種目標に合った個体を選び出す方法です。突然変異は自然条件(通常の交配)でも起こりますが、その頻度は極めて低く、育種法としては利用できません。そこで、人為的に突然変異を誘発する方法が考案されました。突然変異を誘発する方法には組織培養、化学薬品処理、X線やγ線などの放射線処理、粒子線処理(イオンビーム処理)があります。各方法には施設・設備、危険性、変異率などにそれぞれ一長一短があります。また、育種する植物の種類や部位によっては利用できない方法もあります。
遺伝子組み換え法は目的とする形態変化や性質(育種目標)を付加するためにその形態や性質を持つ他の生物の遺伝子を導入する方法です。目的の形態や性質の遺伝子を直接導入するため、育種目標を達成しやすいです。しかし、導入する遺伝子によってはうまく機能しない場合もあり、導入する遺伝子の詳細な研究も必要です。
(お問い合わせ)農業技術センター 農産園芸部 TEL:0790-47-2412