開発技術名

「(R3)県内のサクラマス、サツキマス増殖のための基礎的知見」

 

技術開発の経緯

 渓流魚のヤマメの一部は海に下り、約1年間日本海で大きく育ち、春にサクラマスとなって生まれた河川に遡上し、秋に産卵する。一方、アマゴの一部は瀬戸内海に下り、サツキマスとなって生まれた河川に遡上して秋に産卵する。このサクラマス、サツキマスは漁獲対象としてだけでなく、大型であるため遊漁対象として人気が高まっている。しかし、県内のサクラマス、サツキマスについての生態学的知見はほとんどなく、増殖方策が立てにくい状態にある。

 

開発技術の内容

 聞き取り、河川調査及びDNA解析によって以下の知見を得た。

 ア サクラマス、サツキマスともに遡上を阻害する構造物の影響で、昔に比べ遡上範囲が短くなっているか、遡上が見ら

  れなくなった支流も認められ、現在では上流部での生息を主体とするヤマメ、アマゴとは生息範囲が異なっていると考

  えられる。

 イ 新温泉町の岸田川では堰堤の影響で遡上できなくなり、上流部のサクラマスの産卵場はなくなったが、堰堤よりも下

  流で産卵場と考えられる箇所がまだ残存している。

 ウ 海に下ったサクラマス、サツキマスと河川に残ったヤマメ、アマゴのDNAを比較すると、降海型と河川残留型でおよ

  そ半数が遺伝的に特有の増副産物を示す(電気泳動で異なるパターンを示す。すなわち、サクラマスの半数に見られる

  1100bpサイズのDNA断片がヤマメでは全く見られない。また、アマゴの半数に見られる220bpサイズDNA断片がサツ

  キマスでは全く見られない)ことが明らかになったことから、降海もしくは河川残留に遺伝的要因も関与していること

  が示唆される。

 エ サクラマス、サツキマスの増殖には、昔のように天然遡上する個体が上流部で産卵できるよう、魚道等の整備を実施

  する必要性がある。また、降海しやすい遺伝系統の存在が示唆されたことから、積極的増殖策として、当該河川に遡上

  してきたサクラマス、サツキマスを親魚にした種苗放流が考えられる。

期待する効果

 サクラマス、サツキマスの増殖に取り組む際には、今回得られた基礎的知見を利用することで、より効率的な増殖が期待される。

 

連絡先

 水産技術センター 内水面漁業センター 079-678-1701 (作成者:安信秀樹)