開発技術名

「(R3)人工授精の受胎率向上に向けたウシ精子運動性評価の新たな指標」

 

技術開発の経緯

 

 畜産農家の経営安定のためには子牛生産効率の向上が重要である。しかし、人工授精による受胎率は低下しており、深刻な問題となっている。受胎率向上のための雄牛側からのアプローチとしては、受胎性の高い精液の提供が挙げられるが、精子の運動性評価については約半世紀前から変わっていない。近年では、通常の精液検査に合格しても受胎性に差がみられる場合がある。

 ウシ精子の運動にはローテーションを伴う運動があり、細胞内シグナル伝達分子の活性と関連があることが報告されている。そこで、ウシ精子の鞭毛機能評価のためにローテーション運動の発生機構および役割を解明し、精子運動性評価の新たな指標の可能性を検討した。

 

開発技術の内容

 

 ウシ精子をハイスピードカメラで観察すると、その運動様式は、ローテーションを伴う前進または円運動、ローテーションを伴わない前進または円運動、振動運動、不動と6つのパターンに分類でき、その精子割合は個体ごとに異なる。実際に凍結保存精子の運動様式と人工授精による受胎率の関係をスペアマンの順位相関で評価したところ、ローテーション運動を示す精子の割合と受胎率の間に有意で高い正の相関関係(r=0.81p<0.01)が認められる。凍結精液を用いた人工授精で受胎率60%を確保するためには、ローテーション運動を示す精子割合で55%が目安と考えられる。

 

期待する効果

 ウシ精子の受胎性を高い精度で評価できる。

 

連絡先

 北部農業技術センター 畜産部 079-674-1230 (作成者:坂瀬充洋)