開発技術名

「(R3)転炉スラグの稲こうじ病抑制能評価法の開発」

 

技術開発の経緯

 

 稲こうじ病に対する薬剤散布以外の耕種的防除技術として、転炉スラグ施用法の開発を図り、実用化を進めている。しかし、この転炉スラグの稲こうじ病抑制機構は不明であり、それを解明することで、より効果の高い資材や施用方法の開発につながることが期待できる。そこで、圃場での施用量(300kg/10a)を反映させた室内モデル試験により、その抑制機構の解明に取り組んだ。

 

開発技術の内容

 

ア 稲こうじ病厚壁胞子を転炉スラグ加用土壌抽出液に混合すると、胞子の崩壊が無施用の2倍以上になり、

 胞子発芽が無施用の50%に抑制されることを、顕微鏡で観察できる。

イ 稲こうじ病厚壁胞子と転炉スラグ加用土壌抽出液を混和した溶液を、無菌育成したイネ根に接種する

 と、根表面の付着数を無処理の30%に、発芽数を23%に減少させる。また、この混合溶液を7日間静置し

 た後に接種すると、根内部への侵入数が無処理の67%に減少する。

ウ 各溶液の分析結果から、カルシウムイオンとマグネシウムイオンの濃度が無処理の約2倍となったのに対

 して、転炉スラグに豊富に含まれる鉄イオンは検出されなかった。このことから、転炉スラグに含まれる

 カルシウムやマグネシウムの化合物が、稲こうじ病抑制に寄与していると考えられる。

エ 以上の手法を用いて、稲こうじ病を効果的に抑制するための転炉スラグ資材やその施用法をスクリーニ

 ングすることができる。

 

期待する効果

 

 稲こうじ病に対して抑制効果の高い転炉スラグ資材や施用法のスクリーニングが室内で安定的にできる。

 

連絡先

 農業技術センター 病害虫部 0790ー47-1222 (作成者: 内橋 嘉一)