開発技術名
「黒毛和種種雄牛精子の形態と分子性状検査に基づく新しい受胎能評価法」
技術開発の経緯
近年、検査結果が正常にもかかわらず、人工授精の受胎率が低い雄個体が存在する。兵庫県では、そのような雄個体を事前に検出するため、①検査に合格した雄個体の凍結精液を用いる②あらかじめ雌牛をホルモン剤で過排卵処理する③この雌牛に①の精液を人工授精する④雌牛から卵を回収して、受精している卵子(受精卵)の割合を調べる方法を用いている。そこで、より簡単で低コストな方法として、融解した精子を染色して評価する方法を検討した。
開発技術の内容
ア 精子の先端部分の損傷度合の検討
精子を蛍光試薬で染色・観察したところ、次のことが明らかとなった。①凍結・融解によって先端部分が損傷するが、損傷の度合いに個体差がある。②先端の形状が正常な精子の割合と受胎可能な精子の割合に正の相関がある。
イ 精子中の受精と関連のあるタンパク質の染まり具合の検討
受精と関連のあるタンパク質を染色・観察したところ、次のことが明らかとなった。①タンパク質の染まり具合の悪い精子があり、タンパク質の染まり具合に個体差がある。②タンパク質の染まり具合と受精卵率に正の相関がある。
ウ 以上より、精子先端部分の損傷度合や精子中のタンパク質の状態で受胎能を判定することが可能である。
期待する効果
受胎能の低下した雄個体を検出するため、より簡単で低コストな一次スクリーニングとして活用できる。
連絡先
北部農業技術センター畜産部 079-674-1230 (作成者:坂瀬充洋)