開発技術名

「分娩前後の乳牛におけるルーメンアシドーシスの病態」

 

技術開発の経緯

 乳牛は高泌乳化に対応するため多量の濃厚飼料を給与せざるを得ないが、第一胃(ルーメン)内で発酵し易い濃厚飼料の多給によりルーメン液pHが異常に低下する病態(ルーメンアシドーシス:SARA)を素因とした生産病が多発し、逆に生産性が低下してしまうことが課題となっており、生産現場からは予防技術の開発が切望されている。
 ルーメン液の経時的採材が困難であるため、これまではSARAの病態を詳細に把握することができなかったが、共同研究機関が経口投与でルーメン内に留置して長期間連続的にルーメン液pHを測定できる無線式ルーメンpHセンサーを開発したことにより、それが可能となった。そこで、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の資金を得て、SARAの病態解析に取り組んだ。

 

開発技術の内容

ア 分娩後の飼料摂取量の増加に伴い、ルーメン液pHは低下し、ルーメンpHセンサー注1)専用解析ソフトによる分散、低pH時間、低pH面積(AUC)などSARAやルーメン内環境の不安定化を示す値が2週目頃をピークに増大した後、徐々に回復する。
イ 分娩後重篤なSARAを呈した牛は、食欲が低下し、ルーメン液中エンドトキシン注2)濃度が有意に上昇することで、体内に炎症反応がおこり、血液中アルブミン注3)濃度が低下する。
注1) ルーメン内に経口的に投与し、pHと温度を継続的に測定し、データを無線で送信・受信・記録できる装置
注2) SARAでルーメン内に生息する微生物が死滅することで生じる毒素
注3) 肝臓で合成され全身へ運ばれる重要な蛋白質

 

期待する効果

 本プロジェクト研究では、共同研究機関がルーメンアシドーシスの防除技術として生菌製剤や新規木材飼料の効果を確認した他、ルーメンpHセンサーについても現場活用を想定した取り組みを行っており、今後、生産現場でのSARAの正確な診断と防除技術の適用を体系化していく必要がある。

 

連絡先

 淡路農業技術センター畜産部 0799-42-4880 (作成者:生田 健太郎)