開発技術名
「交雑育種に向けた養殖ノリの色素変異株の分離作出方法」
技術開発の経緯
色落ち被害、単価の下落等により、ノリ養殖現場では、多収性に加え、味の良い高品質なノリ、色落ちしにくいノリ等の開発について強い要望がある。しかし、養殖ノリは雌雄同株で交雑確認が難しいため、交雑育種はほとんど取り組まれておらず、主に選抜育種により多くの養殖株が分離されてきている。このため、数多く存在するノリ養殖株で遺伝的画一化が進んでいる。現在使用されているノリ養殖種苗とは異なる新たな養殖ノリを今後創出するためには、養殖ノリにおいても交雑育種を積極的に進めていく必要がある。そこで、養殖ノリの交雑育種に向けて、色彩をマーカーにして交雑確認ができる色素変異株の分離作出方法を検討した。
開発技術の内容
養殖ノリの葉状体に突然変異を誘発させるため重イオンビームを照射し、得られた変異細胞由来のクローン葉状体を自家受精させ、遺伝的に固定された色素変異株(純系株)を効率的に分離作出する。
ア 養殖ノリの葉状体に150Gy以下の炭素イオン(135MeV/u、LET 23keV/μm)を照射する。
イ イオンビーム照射後およそ20日目に、顕微鏡下で色素変異した細胞群を含む葉片を切り出し、試薬アラントインを添加して培養することにより、変異細胞群から単胞子の放出を誘発させ、変異細胞由来のクローン葉状体に生長させる。
ウ 単胞子から生長したクローン葉状体を自家受精させることにより、F1糸状体で遺伝的に固定された色素変異株(純系株)を得ることができる。
期待する効果
交雑確認に利用できる色素変異株を作出することができるようになったため、養殖ノリにおける交雑育種の先導的な取り組みを積極的に進めていく。
連絡先
水産技術センター水産増殖部 078-941-8601 (作成者:二羽恭介)