開発技術名

「養殖ノリにおける交雑育種法」

 

技術開発の経緯

 農作物や園芸植物では、交雑育種によって多くの品種が開発されてきている。しかしながら、養殖ノリの葉状体は単純な形態でかつ同一個体上に雌雄の生殖細胞が混在して形成されるため、通常、交雑の確認は極めて難しい。このため、養殖ノリではほとんど交雑育種は取り組まれておらず、現在でも、おもに選抜育種によって養殖品種が育成されている。その結果、今日のノリ養殖用種苗では、遺伝的画一化が進んでいる。

 

開発技術の内容

 養殖ノリの葉状体は雌雄同株のため、正常な株同士を交雑させても、自家受精で生じた同型接合型糸状体なのか、他家受精で生じた異型接合型糸状体なのか、区別が困難である。このため、核変異した色素変異株を用いて、下記の手法により、養殖ノリでも効率的に交雑育種が取り組めるようにした。
ア 色素変異型と野生型の葉状体を、それぞれ別々の容器で培養する。
イ 各葉状体が成熟し始めたら、成熟直前部位から葉片を切り出し、色素変異型葉片1個と野生型葉片複数個を同一容器に入れて交雑させる。
ウ 色素変異型葉片から接合胞子を取り、F1糸状体に生長させる。
エ F1糸状体には色素変異型(同型接合型)と野生型(異型接合型)の糸状体が生じてくる。
オ 交雑によって生じた野生型糸状体から殻胞子を放出させ、F1葉状体に生長させる。このときに、野生型と色素変異型の色彩からなる区分状キメラ葉状体が高頻度で生じる。
カ 区分状キメラ葉状体の野生型区分で生長の良い区分や色調の濃い区分があれば切り取り、別容器に移して培養し、単胞子を放出させ、単胞子由来の葉状体に生長させる。
キ 単胞子由来の葉状体が成熟したら、自家受精させ純系糸状体に分離・確立する。これにより、キメラ葉状体各区分から遺伝的に固定した純系糸状体を効率的に分離することができ、養殖ノリでも交雑育種が取り組める。

 

期待する効果

 本手法を活用することにより、養殖ノリにおける交雑育種の先導的な取り組みを積極的に進めていく。

 

連絡先

 水産技術センター水産増殖部 078-941-8601 (作成者:二羽恭介)