開発技術名
マガキ貝毒の出荷自主規制期間短縮のための科学的根拠
技術開発の経緯
兵庫県播磨灘では、平成30年から麻痺性貝毒が頻発するようになり、県下の漁業者は、養殖マガキ等の多くの二枚貝で出荷自主規制を余儀なくされている。毒化した二枚貝類の出荷再開には、国の通知により原則三週連続の無毒確認(=規制値以下の確認)が必要であるが、平成27年の改正通知により、貝毒の蓄積や低下に関する科学的知見と根拠が整った場合に限り、海域や貝種の特性に応じて期間の短縮化を検討することができると変更された。(マガキでは広島県のみで事例あり)。県下の漁業者や漁業団体からは、本県でも出荷自主規制期間の短縮化に対する強い要望があった。
開発技術の内容
播磨灘産マガキの麻痺性貝毒の減毒特性を明らかにし、総合センター研究報告として公表した(5巻、33-42頁、2022)。主な内容は以下のとおり。
ア 減毒係数(0.165-0.286)は十分に大きく、すみやかな減毒が見込まれる(図1、図2)。
イ いったん規制値(4MU/g)以下に減毒後、再度、規制値を上回る可能性は低い。
ウ 減毒係数の95%予測下限値によるシミュレーションでは、規制期間を1週間短縮しても試料毒量が規制値を上回る可能性は低い(図2)。
エ マガキの個体別の毒量のばらつきを加味したシミュレーションでは、規制期間を短縮する場合、規制値を下回って1週間後の検査で2.0MU/g以下が必要条件となる(表1)。
期待する効果
これらの科学的知見をもとに、農林水産省消費安全局との協議を経て、県貝毒安全対策協議会において兵庫県播磨灘産マガキの出荷自主規制の短縮要件(生産海域、生産方法、生産期間、原因プランクトン密度、短縮時の毒量等)が検討され、兵庫県貝毒対策事務取扱要領が改正された(令和4年10月)。
令和4年12月に播磨灘(姫路市西部)のマガキ養殖において貝毒が発生した際には、出荷自主規制期間の短縮(通常より7日間の短縮)が実現した。