開発技術名

「(R3)施設トマト栽培支援のための生育・収量予測技術」

 

技術開発の経緯

 県内施設トマト生産現場では、気象変動に起因する出荷時期および収量の変動が経営に悪影響を及ぼしている。そこで、生体データおよび環境データから各収量構成要素を推定する回帰式を作成し、生育・収量予測システムの確立を試みた。

 

開発技術の内容

 

ア 県下で主要な3品種について、下記回帰式を用いることで施設の週ごとの積算気温から週当たり展開葉数を推定すること

 ができる。

 「桃太郎ヨーク」 

y=2.6056 ln (x) – 10.601

[R² = 0.7034]

 「桃太郎ファイト」

y=3.2200 ln (x) 13.529

[R² = 0.7004]

 「ハウス桃太郎」 

y=2.6432 ln (x) 10.722

[R² = 0.6355]

 ※ただし、y=展葉枚数(枚/週)、x=週ごとの積算気温(℃)

イ 県下で主要な3品種について、下記回帰式を用いることで個葉の葉幅から個葉面積を推定することができる。

 「桃太郎ヨーク」 

y=0.4827x2 – 13.617x + 183.63 

R² = 0.9053

 「桃太郎ファイト」

y=0.3613x2 3.6082x + 2.1207 

R² = 0.9709

 「ハウス桃太郎」 

y=0.4783x2 8.2096x + 2.6923 

R² = 0.9364

 ※ただし、y=個葉面積(cm2 )、x=葉幅(cm

ウ 「桃太郎ヨーク」について、群落内外の光環境と実際の葉面積の関係から、その群落が光を受けることのできる能力を

 示す「群落吸光係数(k)」は0.615である。また、群落の受光量の総和と実際の乾物総生産量の関係から、葉の単位面積当

 たりの乾物生産能力を示す「光利用効率(LUE)」は3.29g/MJである。これらにより、施設内の光量と葉面積から、総乾物

 生産量を推定することができる。また、他の2品種についても同様に総乾物生産量の推定ができる。

エ 8段摘心栽培の「桃太郎ヨーク」について、収穫開始から摘心までの期間における果実への乾物分配率は67.6%である

 が、摘心後は分配率が変化し、54.3%となる。また、他の2品種についても同様の傾向である。

オ 上記回帰式および各種係数を用い、乾物生産に関連する収量構成要素を試算することで、作期や収穫段数の異なる作型

 においても収量予測が可能である。ただし、現行システムによる予測値は実測値より11.5%多くなり、現場への導入を想

 定すると、±5%程度の予測精度が必要であると考えられる。

 

期待する効果

 

 出荷時期および収量の予測による経営安定。

 

連絡先

 農業技術センター 農産園芸部  0790ー47-2423  (作成者:渡邉 圭太)