開発技術名

 コムギ種子に寄生したコムギいもち病菌の生存評価手法及びそれを活用した有効な種子消毒法の開発


技術開発の経緯
 

 

 世界的に蔓延し、日本への侵入が警戒されるコムギいもち病(Wheat Blast WB】)に対して、イネいもち菌に卓効を示すとされている薬剤や種子消毒法の防除効果の評価法を検討した。さらに、この評価法を用いて、防除効果が高く、コムギ栽培技術に容易に組み込める種子消毒法を見いだした。

 

開発技術の内容

 

ア 本病は国内未発生であるため、隔離実験室内で罹病種子を作製する必要があることから穂接種法及び湿室処理法を考案した。これにより高度に罹病した種子を作製できる。

イ 種子に寄生する場合、イネいもち病菌と比べてWB菌(WB Fungus WBF】)は気中菌糸が多いため、実体顕微鏡を用いるブロッター法のみでは判別が困難だった。そのため試みたセロテープと光学顕微鏡の併用法を用いると、種子表面のWBFを簡易同定できる(改変ブロッター法)。

ウ 湿度制御型グロースチャンバーによる発生地域の気象を模した育苗法(温度20-30℃、湿度80%)によりWBを発病させることができる。さらに、水稲用粒状培土の覆土は発病を促進する。

エ ハイグロマイシン(HM)耐性遺伝子保有WBF汚染コムギ種子をシャーレ内で発芽させ、その地際部をHM添加培地に置くことにより菌を分離し、種子消毒効果を評価できる(シャーレ発芽法)。

オ 上記の手法を用いた水稲用種子消毒農薬及び方法のスクリーニングを行った。イプコナゾール剤10倍及びベノミル剤7.5倍の種子浸漬処理は、発病及び菌検出が全くみられず、高い防除効果がある。

 

期待する効果 

 

 種子消毒によりWBの伝染環が遮断でき、効果的な防除が実現できる。