開発技術名

「苗畑でのヒメカタショウロ感染苗作成方法と感染による活着率の向上」

 

技術開発の経緯

 山火事跡地のような貧栄養の劣悪な環境でも活着・成長が良い広葉樹苗木の必要性を要望され、土壌中の菌根菌との共生により劣悪地での成長がよいとされる菌根菌感染苗の作成を検討した。以前の課題において①感染源としての感染苗木の作成方法(コナラ苗木に野外から採取し、あらかじめ調整したヒメカタショウロ懸濁液をかける)及び、②育苗箱レベルでの感染方法(播種した育苗箱の真ん中に感染源苗木を植栽し複数の感染苗を作成)は確立しているため、この度は、大量増殖法を確立した。また、その効果についても検証した。

 

開発技術の内容

【苗畑で大量に菌根菌感染苗を作成する方法】
ア 苗畑レベルでの感染:苗畑で感染苗木を生産する方法は、苗畑に3~4列15cm間隔で播種および未感染苗木(通常の苗木)を植栽し、真ん中の列に75cm間隔で感染源苗木を植栽する。そのまま通常の苗木と同様に育苗すると、およそ1年で苗畑全体のコナラ苗木のうち98%程度がヒメカタショウロ菌根に感染する。
イ 菌根を形成した感染苗木のうち、根端の半分以上が菌根化している個体は88%程度である。
【菌根菌感染苗木の効果】
ア 根端が半分以上菌根化している感染苗木は、半分以上菌根化していない苗木と比較して有意に地際径成長が大きい。
イ 菌根菌感染苗木を山火事跡地の現場に植栽した場合、活着率は市販のふるい苗(裸苗)が80%であるのに対し、感染苗木は95%である。ポット苗と比べても、先枯れ個体はみられるが、活着は同程度である。

 

期待する効果

 県内で生産するコナラふるい苗に菌根菌を感染させることにより、これまでふるい苗では植栽が困難とされた山火事跡地等の貧栄養の劣悪場所に植栽が可能となる。

 

連絡先

 森林林業技術センター森林活用部 0790-62-2118 (作成者:藤堂千景)