開発技術名

「アサリ人工種苗の垂下ネットカゴによる中間育成技術開発」

 

技術開発の経緯

 兵庫県のアサリ漁獲量は1970年代後半から増加し、1987年には1,377tの漁獲ピークを迎え、1998年までは600t以上の水準にあった。しかし、1999年に激減し、近年は100t以下で推移し、2005年には10tまで落ち込んだ。この漁獲量の減少要因として、干潟の平坦化、浮遊幼生の減少及びナルトビエイの食害などが考えられた。
 そこで、アサリ資源の回復を目的として、人工種苗の生産と放流に関する研究に着手し、簡便かつ低コストでアサリ稚貝を生産する技術を開発した。

 

開発技術の内容

 アサリの種苗生産では、卵からふ化したアサリ幼生(0.06mm程度)は0.5mmまで成長すると海底面で生活するが、成貝と同様な体器官はまだ完成していない。さらに成長して殻長が1mmになると、ほぼ成貝と同じ器官を持つ。このことから、これまでのアサリ人工種苗生産では、この殻長1mmの稚貝まで陸上水槽で植物プランクトンを与えて飼育していたが、餌として与える植物プランクトンの培養に要する多額のコストが、アサリの種苗生産単価を上げる一番の要因になっており(約10円/個)、アサリ人工種苗の大量生産の障害となっていた。
 この研究では、成貝と同じような体の器官はまだ完成していないものの,浮遊することがなくなる殻長0.5mmで陸上飼育を終了し、その後は野外において垂下ネットカゴで中間育成することによって、生産コストを削減することができた。
 殻長0.5mmから野外飼育することによって、生産コストを極限まで下げつつ(0.25円/個)、良好な成長・生残を得ることに成功した。

 

期待する効果

 この技術の活用によって、人工種苗の大量放流が可能となり、アサリ資源の回復やアサリ養殖用の人工種苗の提供が期待される。

 

連絡先

 水産技術センター水産増殖部 078-941-8601