開発技術名

「地場天然種苗を用いたマガキ養殖システムの確立」

 

技術開発の経緯

 近年多発している全国的なマガキ採苗不調による種苗供給不安定化は、他県産種苗に依存する本県のマガキ養殖にとって多大な影響を与えている。一方で、マガキ養殖従事者の高齢化、カキ剝きにかかる労働力不足などにより、生産性の低下もみられている。これら、マガキ養殖を取り巻く問題点を解決するため、地場天然採苗によって得た種苗を用い、抑制を行わない養殖法により、殻付きカキとして出荷できる、収益性の高い養殖システムの開発を行った。

 

開発技術の内容

 ア 地場天然採苗のための効率的な採苗器(野菜カゴに両端を切り落とした小容量ペットボトルを詰めた採苗器)およびその改良型採苗器(両端を切り落とした

  大容量ペットボトルを連結し、外側を活魚輸送用の網袋で覆った採苗器)を用いた地場天然採苗により、効率的にシングルシードを得ることができる。また、

  天然採苗に必須の浮遊幼生調査手法の技術移転のため、「採苗マニュアル」を活用する(ペットボトルは廃品利用するので費用はかからないが、浮遊幼生調査

  のためのプランクトンネット、顕微鏡等の備品整備が必要)。

 イ シングルシードをカキ養殖用バスケットや丸カゴを用いて養殖することにより、通常養殖マガキと比較して殻幅が大きくなる。また、収容数によって殻の形

  状や成長をコントロールすることが可能であるため、市場ニーズに対応できる。さらに、抑制を行わないため、採苗から半年程度で出荷が可能となる(延縄養

  殖施設一式(シングルシード養殖用バスケット、ロープ、フロート等の整備が必要)。

 ウ 育成されたマガキは、種苗の由来、養殖方法、形状や味覚等、通常養殖マガキと差別化した純地場産シングルシードマガキとしてブランド化し、殻付きでの

  販売を行う(直販、オイスターバーや居酒屋への販売、ふるさと納税返礼品としての活用等)ことができる。総合指数。

 

期待する効果

 漁業者自らが地場天然種苗を行うことで安定的な種苗確保が期待できる。また、純地場産シングルシードマガキとしてブランド化することにより付加価値が生まれ、殻付き販売により労働力の削減も期待できる。

 

連絡先

 水産技術センター 水産増殖部 078-941-8603 (作成者:谷田圭亮)