開発技術名

「高泌乳牛の第一胃内環境を最適化する完全混合飼料(TMR)調製法」

 

技術開発の経緯

 改良による高泌乳化で増大した乳牛の養分要求量を充足するため、飼料給与量と濃厚飼料割合の増加が図られている。しかし、そのことで第一胃内環境の酸性化(潜在性ルーメンアシドーシス)を招き、それに伴う種々の生産病による生産性阻害で乳牛の生涯生産性は低迷している。そのため、第一胃内環境を安定させ、生産病を防止しつつ、高泌乳牛の養分要求量を充足できる飼料給与技術が求められている。
 最近、国内で第一胃内に留置し、長期間pHを測定・記録できる無線式ルーメンpHセンサーが開発され、これまで不可能であった第一胃内環境の連続モニタリングが可能となったことから、本センサーを用いて、第一胃内環境を最適化する完全混合飼料(TMR)の調製法を検討した。

 

開発技術の内容

ア 混合する乾草の硬さとTMRの切断長の影響
 乾草の硬さを2種類(硬い:スーダンとフェスク、柔い:クレインとイタリアン)とし、それぞれパーティクルセパレーター(4段の篩で飼料の粒度分布を測定する道具)による区分で、上から2段目の篩上の重量割合を目安に切断長を3段階(長16.2%・中18.8%・短23.4%)に調節したTMRを給与して、ルーメン液pHの変動を比較した。その結果、硬い乾草では切断長の影響は小さいが、柔い乾草では切断長が中の時pHの変動が大きく、短いと変動が小さい。
イ 非繊維性炭水化物(NFC)割合とTMRの切断長の影響
 NFC割合を2段階(35%と40%)とし、それぞれに切断長を長・中・短の3段階に調整したTMRを給与して、ルーメン液pHの変動を比較した結果、NFC割合を高めると総VFA濃度が上がり、VFA中酢酸割合が下がるため、切断長が短くなるとルーメン液pHの変動が大きくなった。
ウ 以上のことから、混合する乾草は硬いものを用い、NFC割合を高める場合は、切断長を短くしすぎないように注意することで高泌乳牛へのエネルギー供給を確保しつつ、第一胃内環境を最適化するTMRを調製できる。

 

期待する効果

 高泌乳牛の生産病罹患率を20%程度低減、生乳生産量を10%程度向上できる。

 

連絡先

 淡路農業技術センター畜産部 0799-42-4880 (作成者:生田健太郎)