開発技術名

「マメ科緑肥と多収品種による米生産費低減効果」

 

技術開発の経緯

 ヘアリーベッチは、乾物生産量が多いので緑肥として肥料代替効果が高いが、生育が旺盛になると、従来の良食味品種では肥効が過剰になって収量や品質を損ねる恐れがある。一方、業務用として需要が高まっている多収品種は、高収量を得るためには多肥条件で栽培する必要がある。そこで、ヘアリーベッチの肥料代替効果と多収品種の高生産性を活かした低コスト・多収栽培技術の確立を図る。

 

開発技術の内容

ア ヘアリーベッチ中生品種「寒太郎」を用いて3月初旬に播種し、6月上旬まで細断(すき込み)を延長する「春播き緑肥」において、生草重4t/10a(窒素成分利用率として8~9kg/10a相当)が確保でき、「ヒノヒカリ」の無肥料栽培で450kg/10a以上の収量が得られる。
イ 緑肥の大量すき込みによる土壌の異常還元による水稲の生育障害対策として、①フレールモアによる緑肥細断処理、②「ヒノヒカリ」等の中生品種を用いた90g/箱の薄播きによる中苗(30日間育苗)移植を実施することで、初期生育は緩慢であるが、その後の生育は回復し、450kg/10a以上の収量が確保できる。
ウ 上記「春播き」「フレールモア」栽培体系に「やまだわら」(業務用)、「たちはるか」(いもち耐性)を導入すると、「ヒノヒカリ」458kg/10aに対して、「やまだわら」618 kg/10a (対比134)、「たちはるか」596 kg/10a (対比130)と、3割以上増収する。病害虫防除を省略した栽培体系では、「ヒノヒカリ」300 kg/10aに対して、「やまだわら」583 kg/10a (対比194)、「たちはるか」545 kg/10a (対比182) の収量が確保可能である。
エ 業務用米は一般食用米より1~2割程度安価であるが、3割以上の増収により、粗収益は向上する。ヘアリーベッチの種子費用(播種量3kg/10aとして約3000円)や付帯作業が増えるものの、肥料代や春先のほ場管理費用が削減できることから総合的な生産コストの低減が可能となる。

 

期待する効果

 緑肥効果と業務用多収米の組合わせにより、化学肥料の低減など環境創造型農業の拡大につながる。

 

連絡先

 農業技術センター農産園芸部 0790-47-2412 (作成者:牛尾 昭浩)