開発技術名

「気化熱を利用したイチゴ高設栽培装置の培地冷却による開花・収量安定化技術」

 

技術開発の経緯

 短日・低温で花芽分化するイチゴは、近年の温暖化により、開花が遅れたりばらつくことから、収量が不安定になる傾向があった。特に、頂果房と第1次腋果房の間に生じる収穫の谷間が問題となっていた。これに対し、高設栽培装置においては、気化潜熱を利用した培地の昇温抑制技術が開発され、効果が確認されていた。
 そこで、この気化潜熱利用の培地昇温抑制技術を、イチゴの兵庫方式高設栽培装置に応用して、イチゴの促成栽培で開花を安定させる技術の実用化を試みた。

 

開発技術の内容

ア 装置の内容及び経費
① 兵庫方式高設栽培装置*の一端に、送風機からダクト、塩ビ管を通じて装置内部のコルゲート管に風を送り込むように改造を行った。
*兵庫方式高設栽培装置:U字溝型をした発泡スチロール製ベッドを連結し、両端を板でふさぎ長大なプランター型とする。その上に水漏れ防止用ポリシート、集水用コルゲート管、防根用不織布、培地を順に載せた構造である。コルゲート管は防根用不織布を介し培地と接触している。
② 改造に要する資材・経費は、1ベッド当たり塩ビ管φ40×1m、φ65×10cm、及びφ65ソケット、65-40異径ソケット、90°VU40エルボ各1個で、送風機を除き1ベッド当たり800円程度である。他に、送風機及び送風機からベッドまでのポリダクトを要する。なお、ハウス内に加温機があればその送風機能が利用可能である。
イ 送風により最大3℃程度地温が低下し、それにより頂果房及び第1次腋果房の開花が促進される。
ウ イチゴの高設栽培で、従来の育苗床での花芽分化促進処理を兼ねて苗を早めに定植し、すぐに培地冷却を行うと頂果房・腋果房の開花前進・安定に有効である。
エ イチゴの高設栽培において「章姫」は、兵庫方式で送風し、定植1ヶ月後程度の10月上中旬に停止するのが望ましく、「さちのか」では、より低温要求性が強いため、10月中下旬まで送風を継続するか、より冷却効果の高いハンモック式で送風を行う方が開花は前進する。

 

期待する効果

 イチゴの花芽分化の促進と継続性が図られ、継続して安定した収量を確保することが可能となる。

 

連絡先

 農業技術センター 農産園芸部 0790-47-2423