当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。今回は農業技術センター 農産園芸部 副主任 北村 睦季が担当します。

 

 令和3年産特産果樹生産動態等調査によると、兵庫県はイチジクの生産量が全国第4位となっています。神戸・阪神、淡路などの県南地域を中心に、都市近郊の立地を活かした栽培が行われています。他の果樹と比較して成園化するまでの年数が短く、栽培が容易で、収益性が高いことなどから、新規に取り組みやすい品目として、県内各地で導入が進んでいます。

 

 イチジクの栽培上の課題の一つに、「いや地」があります。これは、定植後数年経つと樹勢が衰弱する現象のことで、一度発生すると改植しても樹勢は回復せず、経営上の大きな障害になります。いや地の主要因は、ネコブセンチュウの寄生により、根の機能が阻害されることだとされています(写真1)。

 

 

 対策としては、他のほ場への新植や水田転換などが有効ですが、実施するには大きな労力やコストがかかります。これに対し、強勢品種「Zidi」等を台木とする接ぎ木苗を植栽すると、いや地発生ほ場でも、健全な自根樹と同等の生育を確保できるという知見があり、県内においても一部の産地で導入が進んでいます。「Zidi」はチュニジア原産の品種で、ネコブセンチュウの寄生を受けてもなお、強い樹勢を維持します。

 長年イチジクを栽培してきた当センターのイチジク園においても、いや地現象がみられています。そこで、2022年に‘Zidi’台‘桝井ドーフィン’苗を植え付け、生育の評価を継続して行っています。3年生樹についてみると、‘桝井ドーフィン’自根樹の生育はあまりよくありません(写真2)。一方で、Zidi台樹は主幹が太く、新梢の生育も旺盛です。

 これらの樹体について、経時的に生育調査を行ったところ、自根樹と比較して新梢長が約20cm長く、新梢の基部径も約3mm太い結果となりました(図1、2)。

 

 

 さらに、‘Zidi’台‘桝井ドーフィン’と共台‘桝井ドーフィン’の4年生樹を掘り上げたものを比較すると、同じ樹齢でも、Zidi台樹は根量が多いことが見てわかります(写真3)。

 

 

 これらの根を乾燥させて重量を測ったところ、1樹あたりの根の乾物重には2倍以上の差がみられました(図3)。このことから、Zidi台樹の樹勢の強さは、ネコブセンチュウの寄生に負けず発達する根群が一つの要因として考えられました。

 

 

 兵庫県で主に栽培されている‘桝井ドーフィン’は大正14年に川西市で導入されてから、昨年、100年を迎えたところであり、生産者・消費者双方から長く愛されてきた品種です。いや地だけでなく、耐寒性の低さや輸送性の悪さなど、経営上の様々な課題については、引き続き対策を検討していきたいと思います。