当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。今回は北部農業技術センター主任研究員 松倉大樹が担当します。
北部農業技術センターでは、兵庫県のブランド和牛肉である「神戸ビーフ・但馬牛(たじまぎゅう)」のもととなる、但馬牛(たじまうし)の改良拠点として、種雄牛造成等に取り組んでいます。
私の試験研究は、病気の原因となる遺伝子の異常(変異)を探索することで、黒毛和種を飼育する全国の公設試験研究機関と一緒に取り組んでいます。病気を遺伝的な面から見つめ、原因が明らかとなれば、変異を有する個体を種雄牛に選抜しないなどの対応により、但馬牛集団から取り除くことが可能となります。
病気の原因となる遺伝子の変異を探す方法としては、同じ症状を発病した個体から材料を集めて探索する方法が一般的ですが、病気が拡散してから遺伝子の変異が明らかとなるため、対処が遅くなってしまうという短所があります。
今取り組んでいるのは、変異と症状との関係がヒトやマウスなど他の動物で知られている病気をターゲットとし、但馬牛における変異の有無を調べ、変異を有する個体が他の動物と同じ症状を示すかを検証するという探索の方法です。変異と症状の関係が明らかとなり、生産現場を悩ませる有害な症状であれば、集団に拡散する前から対処することができます。
子牛の発育不良や下痢などいくつかの病気について、但馬牛における変異の有無を調べたところ、「多尿症」をもたらす変異が見つかったため、変異を有する個体が本当に多尿症かを調査しました。24時間、全ての尿を採取することは難しいので、次の3つの手法で尿量を推定することにしました。
①流量計による飲水量の測定(写真1)
②尿吸収に伴うおが屑重量増加量の測定(写真2)
③尿中(1日2回採尿)の成分から24時間の尿量を推定
調査した結果、変異を有する個体の一部は、変異を有しない個体に比べて尿量が多いことが明らかとなりました。ただし、その程度は軽度で、但馬牛集団から直ちに排除すべきとは考えられませんでした。
現在、黒毛和種の生産現場で求められるのは、重量や霜降りといった産肉能力にとどまりません。美味しさや繁殖に関わる能力、生産者の省力化に繋がる能力、環境負荷の低減に繋がる能力など、多岐にわたる能力を兼ね備えた牛が求められます。今後も継続して、様々な病気の原因を遺伝的な側面から解明したいと考えています。


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