当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。今回は農業技術センター農産園芸部 研究員 木田 龍之介が担当します。

1 始めに

 日々の食卓に彩りを加えるコマツナ、ホウレンソウのような葉物野菜は、兵庫県内でも都市部に近い産地で栽培されています。しかし、近年は他産地からの流入などによる産地間競争にさらされており、また、収穫や袋詰め等の作業労力の確保も課題となっています。

 私はそのような葉物野菜の課題を解決するため、販売の事前契約や労力確保に有効な生育予測の試験研究に取り組んでいます。本稿ではその葉物野菜の生育予測にスポットを当てていきます。

 

2 葉物野菜の生育予測モデル

「葉物野菜は播種してからいつ収穫できるのか?」

 この質問に対して経験豊富な生産者であれば、各々の答えを自分の中に持っていると思います。しかし、これから農業を始める新規就農者にとっては難しい質問です。また、ベテランの生産者でも近年の異常気象の影響により葉物野菜の生育がこれまでどおりいかないこともあると思います。

 本研究では、施設内の気温と葉物野菜の生育状況を細かく記録し、それぞれの関係を数値化することによって、生育予測モデルを作成します。具体的には、施設内の気温が何℃の時に、葉物野菜の草丈はどれくらい伸びるのかを調べました。その中で、コマツナもホウレンソウもある程度の気温までは、暖かくなるほど生育が早かったのですが、暑くなりすぎると生育が遅くなることがわかりました。

その性質を踏まえて、出芽後の一日の平均気温が最適生育気温を超えた場合は、超えた分だけを減算してその日の気温とする補正式を作成しました(1)。その補正した気温を積算していくことで、寒い冬から暑い夏まで一律に予測可能な生育予測モデルを開発しました(2)

 

 

3 現在の取組

 この生育予測モデルを用いる場合は、施設内の気温データが必要になります。しかし、天気予報でわかるのは施設の外の気温だけです。そこで、施設の外と中の気温の関係について、施設の大きさや側窓の開き具合によってどのような変化があるかの調査を進めています。

 また、水分条件について、上記の生育予測モデルを作成した際には、収穫直前までかん水を続けていました。しかし、生産者によってはそれより早くかん水を中断する場合もあるため、水分条件の影響についても検討しています。

 これらの結果を踏まえて、年間をとおして幅広い施設で使えて、精度高く予測できる生育予測モデルに改良したいと考えています。